中城城跡へ行く前に、グスクめぐりんで一つ手前の「大城」バス停で下車し、中村家住宅を見学します。
中村家住宅は18世紀中頃に建てられた豪農・地頭(庄屋)の住宅です。古い沖縄の住居建築の特色を色濃く残している建物で、1972年の沖縄の日本復帰と共に国の重要文化財に指定されました。
住宅を囲む琉球石灰岩の石牆(石垣)が続きます。
入場料は大人500円、道をはさんで対面にある土産物店「中村家」でチケットを購入します。
正面にはヒンプン(屏風)という目隠しと共に魔物を跳ね返す魔除けの役割をする壁があります。中国発祥で照壁・影壁と言い、中国の影響を受けたベトナムなどでも見られる構造です。
中門を抜けて中に入ります。
正面にはウフヤ(母屋)とトゥングワ(台所)からなる主屋。
赤瓦葺きの屋根の上には魔除けのシーサー。
こちらは「あさぎ(アシャギ)」という離れ座敷部分。
高倉という籾蔵。
建物内部の見学も出来ますので、上がってみましょう。
アサギ(離れ座敷)には首里王府の役人が地方巡視の際に宿泊されました。
沖縄らしく台風対策で屋敷全体が石垣に囲まれています。
母屋は一番座から三番座まであります。
一番座は客間。
二番座は仏間。
仏壇には中村家の位牌(トートーメー)の模型。上段に男性の戒名、下段に女性の戒名を書きます。
三番座。
1~3番座のそれぞれの奥に裏座という部屋があり、寝室や産室として利用されていました。
三番座の前にはナカメー(中前)という板の間があります。
三番座の隣に居間があり、向こう側にはトゥングワ(台所)。
台所にはヒヌカン(火の神)が祀られています。火・竈の神様は日本全国に存在しますし、中国では灶君・灶神、ベトナムにもオンタオという竈の神様がいます。
台所を出るとメーヌヤー(前の屋)という家畜小屋があります。ウマヌヤー(馬小屋)、ウシヌヤー(牛小屋)に加えて、ヒイジャーヤー(山羊小屋)があるのは沖縄らしい。
こちらはフールという豚小屋なのですが、人間のトイレも兼ねています。手前の端の方にあるのが人間用の便器で、排泄物がそのまま豚の餌になるという仕組み。この豚便所システムも中国文化の影響でしょうか。
屋敷内には井戸もありました。
石垣の上をぐるっと周って、屋敷を眺めることが出来ます。
沖縄の建築様式の特徴を備えたこれだけ立派な屋敷が、第二次世界大戦の戦禍を逃れたのは本当に幸運でした。それだけ貴重な建物だからこそ国指定重要文化財になっているのでしょう。
各地で多くの武家屋敷、町家(商家)、洋館などを訪れましたが、個人的にはこの沖縄の中村家住宅が一番興味深く見学出来ました。また初日に行った沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)にも再現された伝統的な民家が屋外展示されていましたが、やっぱり本物は存在感が違います。
この後は中村家住宅のある大城地区を散策してカー(泉)や拝所なども見てみたかったのですが、時間がなくて諦め、中城城跡へ向かいます。